奈良県の新ブランドいちご『古都華』

 

はじめに

奈良県と言えば柿のイメージが強いですが、かつてはいちごの栽培が盛んだったことをご存じでしょうか?
1980年ごろまで、全国トップクラスのいちごの栽培面積を誇り、クリスマスにいちごが食べられるように年内出荷のための栽培技術も、その多くが奈良県で開発されました。
そんな歴史を持つ奈良県で、ブランドいちご、古都華を取材してきました。

目次

●奈良県の新ブランドいちご「古都華」
●古都華の生産者インタビュー
 ー奈良県平群町
 ー古都華のパイオニア ― 辻本農園
●終わりに

 

奈良県の新ブランドいちご「古都華」

 

奈良県で古都華が栽培される前は、あすかルビーという多収性のいちごを栽培していました。
収量だけではなく食味も良かったのですが、年々栽培が難しくなってきたため、新たな品種が求められました。
現在、その後継品種として古都華が栽培されていますが、JAが推奨した品種というわけではありませんでした。
古都華は奈良県農業総合センター(現:奈良県農業研究開発センター)で作られたいちごです。古都、奈良を飾る新しい華になるようにとの願いを込めて、平城遷都1300年を迎えた2010年にデビューしました。
古都華は果皮が柔らかいため、噛むとすぐにジューシーな味わいが口いっぱいに広がります。色艶も良く綺麗な円錐形をしており、濃厚な味わいと芳醇な香りが特徴の、美味しいいちごです。
ところが、単収が低く、栽培も難しいというデメリットもある品種でした。
奈良県が生産者に試験栽培を依頼し、栽培技術を確立することに成功し、現在のブランドを確立することができました。

古都華の生産者インタビュー

奈良県平群町を訪問し、「大和奈良いちご倶楽部」といういちご生産者団体に所属する辻本農園にて、お話を伺いました。

奈良県平群町

奈良県の北西部に位置する平群町は、東には矢田丘陵、西には生駒山系と、緑豊かな山々に囲まれています。中央を流れる竜田川は、古くから人々に親しまれてきました。
倭建命が「たたみこも平群の山のくまかしが葉を…」と詠んだように、美しい自然の中に、歴史ある名所や旧跡が数多く点在しています。自然と歴史が調和した、静かで穏やかな時間が流れるまちです。
大阪府に接した平群町は、都市近郊農業地域として、いちごだけでなく、ぶどうや生花の栽培が盛んに行われています。

 

古都華のパイオニア ― 辻本農園

辻本農園の代表を務める辻本真史さん。いちご農家の3代目として、ご家族・従業員(季節雇用含む)の約20名で、165aのハウスでいちごを栽培しています。一度は家を出て会社員として勤めていた辻本さんですが、古都華との出会いをきっかけに、就農を決意したそうです。
「あのとき古都華を食べていなかったら、就農していなかったかもしれません。」と語る辻本さん。いちごに親しんで育った辻本さんですが、収穫作業を手伝いながら食べた古都華は、それほどまでに心を打つ美味しさでした。

そのいちごを育てたのは父、忠雄さん。奈良県を代表するいちご生産者で、奈良県が古都華の試験栽培を委託した人物です。
忠雄さんは、夏の湿度管理を工夫し、高設栽培という実が地面につかない栽培方法に取り組み、高品質な古都華を栽培することに成功しました。
就農したころは、朝早くからのいちごの収穫に、夜遅くまでの出荷作業と、慣れない長時間の農作業が大変だったそうです。

辻本さんが古都華を育てるうえでのこだわりは、へたぎりぎりまで赤くなったいちごを収穫すること。
いちごは、実が完全に赤くなる前に収穫するのが一般的ですが、「古都華の本当の美味しさを味わっていただきたい」という想いで、完着での収穫を心がけているそうです。
その想いはしっかりと消費者にも届き、古都華のファンは年々増えています。
「自分たちが育てた古都華が美味しいと喜ばれることは嬉しいですし、やりがいにも繋がっています。」

いちごの出荷資材にはゆりかーごを採用。ゆりかーごは、果実への衝撃を和らげる、大石産業株式会社という資材メーカーの特許容器です。
これを使うまでは、平パックでの出荷が主体でした。果皮が柔らかい古都華には、平パックではなく、ゆりかーごが適しています。
「ゆりかーごを導入してから、古都華の販路が広がり、市場を海外にまで広げることができた」そうです。
海外での販売も視野に、天敵生物を活用した防除に取り組み、農薬の使用削減にも取り組んでいます。

終わりに

後継者不足や高齢化で生産者が年々減少していますが、奈良県では辻本農園に影響を受け、いちごの新規就農者も増えています。
高齢化や後継者不足で衰退していた奈良県のいちごに新風を巻き起こした新品種、古都華と、そのブランド化に大きく貢献した辻本農園。
古都華の流通量は決して多いとは言えませんので、ぜひこの機会に一度お召し上がりいただき、古都華の美味しさを味わってみてください。

 

※この記事は、2025年1月24日の取材(JAならけん・辻本農園)に基づき作成しました。

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