宮崎の日向夏・生産者インタビュー
はじめに
日向夏は宮崎特産のかんきつですが、地域によって呼び名が変わります。
高知県では小夏(または土佐小夏)と呼ばれ、静岡県や愛媛県ではニューサマーオレンジと呼ばれます。日向夏の生産量を見てみると、宮崎県が日本一で、その生産量は3,592t(全国シェア約6割)*です。
日向夏という名の通り、江戸時代に宮崎県で発見されたかんきつで、200年以上たった今も宮崎県で盛んに栽培されています。
宮崎の人々に古くから愛されてきた日向夏について、お話を伺いました。
*出典:令和3年特産果樹生産出荷実績調査
目次
??日向夏について
??日向夏生産者インタビュー
??日向夏の食べ方/a>
日向夏は、美しい黄色の果皮や特有の香り等、他のかんきつにはない特徴があります。
食べ方も独特で、ふわふわの白いワタと果肉を一緒に食べることで、本当の美味しさを味わうことができます。
そのルーツは、文政年間(1818~1831年)に宮崎市内の真方安太郎氏の庭先で発見されたものだそうです。
何らかのかんきつの種から芽が出て樹になり、品種改良を重ねることで現在の日向夏となっています。
どういった掛けあわせの品種なのか、明らかにはなっていませんが、ユズの血を引いているのではないかと言われているそうです。
2020年には、宮崎県が中心となり、日向夏発見200年を記念したさまざまなイベントが催されました。その一環で、宮崎駅前には、日向夏をモチーフにした郵便ポストも設置されています。
日向夏生産者で、JA綾町の女性部部長の児玉道子さんにお話を伺いました。
児玉さんの園地には、樹齢130年の現存する最古の日向夏の樹があります。
昔からある日向夏は、宮崎の人々にとって、親しみのあるかんきつ。児玉さんは、ご主人の代から本格的に日向夏を栽培し始め、現在は約2haの園地で露地(ハウス栽培ではない)の日向夏を栽培しています。
日向夏の栽培で、他のかんきつと違いがあるのかお話を伺ったところ、「日向夏は、とにかく受粉作業と袋がけ作業が大変」なのだそうです。
露地栽培の日向夏は、はっさくや文旦の花粉を使って人工的に受粉させます。
日向夏を受粉させるために、はじめにはっさくや文旦のつぼみを収穫し、機械やアルコール溶液などを駆使して花粉を抽出する作業から始まります。
日向夏の開花は4月で、「1週間から10日ほどの期間で花が咲きます。我が家は1,000本くらいの日向夏の樹があり、7~8人で咲いた花一つ一つに、耳かきの梵天のようなもので受粉作業をするので、花の時期はとても忙しい」そうです。
雨が降ったら受粉作業もできませんし、花が新鮮なうちに花粉をつけなければうまく受粉しないと伺い、本当にスピード勝負だなと思いました。
無事受粉して日向夏の実がなると、今度は1つ1つの実に袋がけ作業。
「傷がある実や、大きくならない実には袋をかけませんが、それでも10万個以上は袋をかけます。夏から秋にかけての作業なので、暑くて本当に大変なんですよ」と、明るくお話される児玉さんに、頭が下がる思いでした。
なお、日向夏は露地栽培の種がある日向夏だけでなく、種なしと、種が少ない小核とよばれるものがあります。
種なしと小核はハウス栽培で、種なしは花にジベレリン処理を行い、小核は日向夏の花に、甘夏の花粉を受粉させます。
児玉さんが美味しい日向夏を作るうえで大切にしているは、「土づくり」だそうです。
少し大げさかもしれませんが、児玉さんの日向夏園を歩くと、どこかふかふかしているような印象を受けます。
柔らかい良質な土づくりをすることで、樹がしっかりと根を張り、美味しい日向夏が収穫できるのだと分かりました。
JA綾町では、ハウス日向夏の出荷が2月初旬に解禁となり、3月1日から露地日向夏の出荷が解禁となります。
「宮崎の日向夏はてげおいしっちゃが、食べてみらんね~」
日向夏の美味しい食べ方を知るために、まずは図「日向夏の断面図」をご覧ください。
日向夏は、必ず包丁を使い、りんごの皮を剥くように、フラベド(外果皮)のみを?いてください。なぜなら、アルベド(内果皮)に甘みがあるからです!
みかんのように手で剥いてしまうと、果肉の酸っぱさしか味わえず、日向夏特有の美味しさがなくなってしまいます。
次に、図「日向夏の切り方」を参考に、削ぐように日向夏を切ってお召し上がりください。
アルベド(内果皮)にはほんのりと甘みがあり、甘酸っぱい果肉と相まって、日向夏にしかない爽やかで上品な味わいをお楽しみいただけます。
必ず食べ方を守っていただき、美味しくお召し上がりください!
※この記事は、2024年2月16日の取材と資料調査に基づいて作成しました。